お茶の葉と花
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お茶の葉にお湯を加えると、緑茶ができます。その化学成分はお茶の葉と同じです。緑茶 にはポリフェノール(flavanols,
flavandiols, flavonoids, phenolic acids)が含まれていて、乾燥したお茶の葉の30%ぐらい含まれています。緑茶のポリフェノールのほとんどはフラボノール(flavanols)で、一般にはカテキン(catechins)として知られています。緑茶のカテキンの主なものは、(-)-epigallocatechin-3-gallate
(EGCG), (-)-epigallocatechin (EGC), (-)-epicatechin-3-gallate (ECG), (-)-epicatechin (EC)です。
緑茶のカテキン
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カテキンの構造をよく見ると、シソやブドウの皮のアントシアニンに似ています。真中の酸素が入った6員環に、二重結合があるか無いかの違いです。
カテキンとアントシアニンの化学構造の違い
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カフェイン(caffeine)、テオブロミン(theobromine)、テオフィリン(theophylline)なども、乾燥重量の4%ぐらい含まれています。緑茶1杯(200
ml)には、142 mgの EGCG, 65 mg のEGC, 28 mg のECG, 17 mg のEC, 76 mg のカフェインが含まれています。
紅茶は、緑茶を発酵させて作ります。この段階でカテキンは酵素により酸化されて、カテキンが二つ、三つと結合したものができます。主なものはテアフラビン(theaflavins)、テアルビジン(thearubigins)などのカテキンが二つ結合したもの(bisflavanols)です。テアフラビンは紅茶の葉に1%-2%含まれ、theaflavin,
theaflavin-3-O-gallate, theaflavin-3'-O-gallate, theaflavin-3,3'-O-digallateなどです。テアフラビンには、7員環のベンゾトロポロン(benzotropolone)環があり、紅茶の色と味を決めています。テアルビジンは紅茶の葉に10%-20%含まれますが、カテキンがもっと酸化されたりいくつも結合したもので、その化学構造はっきりしていません。
紅茶に含まれる、テアフラビンとテアルビジン
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ちなみに、ウーロン茶(Oolong tea)は部分的に酸化されたもので、カテキン、テアフラビン、テアルビジンが含まれています。
お茶には 「タンニン(tannins)」 が含まれているとよく言われますが、これはカテキンがいくつも結合したいろいろな構造の物の総称です。タンニンやタンニン酸は市販されていますが、これは柿渋などで、皮のなめしに使われるもので、お茶のタンニンとは異なるものです。お茶の「タンニン」は、お茶ポリフェノール(tea
polyphenols)、お茶フラボノール(tea flavanols)と言ったほうが間違いないでしょう。
ところで、紅茶にレモンを入れると、どうして色が消えるのでしょう?
Q-7で、アントシアニンは酸やアルカリで色が変わると説明しましたが、これと原理は同じです。紅茶の色は、テアフラビンに含まれる7員環のベンゾトロポロンによるものです。トロポロンに付いている-OHが原因です。酸性では-OHですが、中性ではマイナス(-O-)になるのです。マイナスになると
トロポロンの影響で、紅茶の赤色になります。
紅茶の赤(右の式)は、レモンの酸で無色(左の式)になる
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レモンにはクエン酸が重量の6%から7%含まれています。この酸により、上の式で-O-がOHになり、色が消えるのです。クエン酸(citric
acid)は、未熟のダイダイ、レモンに特に多く含まれています。また、ミカン、パイナップル、多くの花や植物の種子、果汁中に含まれ、酸っぱい味がする食品添加物です。大きなレモン一個の酸味は、クエン酸4gにあたります。クエンは、「枸櫞」(表示されるか分かりませんが、国語辞典を見て下さい)と書き、レモンの意味です。クエン酸水溶液のpHは、2.2です(0.1N)。クエン酸は、脂肪、たんぱく質、炭水化物の代謝に関係するクエン酸サイクルにおける重要な中間体で、生物学的に重要な物質です。
クエン酸
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