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αやβはギリシャ文字ですが、化学ではギリシャ文字がよく使われます。α-アミノ酸、α-ヘリックスなどに使われています。ギリシャ文字の読み方を書いてみます。
ギリシャ文字と読み方 |
α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)、ζ(ゼータ)、
η(イータ)、θ(シータ)、ι(イオタ)、κ(カッパ)、λ(ラムダ)、μ(ミュー)、
ν(ニュー)、ξ(クサイ)、ο(オミクロン)、π(パイ)、ρ(ロー)、σ(シグマ)、
τ(タウ)、υ(ユプシロン)、φ(ファイ)、χ(カイ)、ψ(プサイ)、ω(オメガ) |
カロテンはカロチンとも呼ばれていましたが、カロテンと呼ぶように決められました。このような言葉は外国からきたもので、caroteneをドイツ語で読むか英語で読むかで違ってきます。この頃は英語が主流ですが、日本の化学はドイツから入ってきたので、ドイツ語読みが多いのです。pHをペーハーと呼ぶのもドイツ語ですが、ピーエッチと英語読みになってきています。
カロテノイドの命名法
カロテノイド (carotenoids) は、まん中にポリエン部分(二重結合と一重結合がくり返されている部分、caroteneカロテン)があり、両端にいろんな構造がついています。カロテノイドは、中心の部分は同じで、末端部分が異なっています。例えばβ−カロテンでは、中心にあるカロテン部分(緑色)の両端に、赤と青の部分が付いています(ただし、β-カロテンでは、赤と青の部分は同じもの)。
カロテノイドには多くの種類がありますが、両端の赤と青の部分が違うだけです。末端の構造にβ、εなどの名前を付けておけば、カロテノイドに名前を付けることができます。ただし、末端の構造は2つあるので、規則を決めておく必要があります。β-カロテンは、2つともβの構造になっていますが、α-カロテン(α-carotene)は、片方がβ、もう一方がεの構造になっています。
正式な名前(IUPAC名)はβ,ε-カロテン(β,ε-Carotene)ですが、α-カロテンは慣用名として使ってもよいことになっています。ペンネーム、芸名みたいなものですね。
種々のカロテンの慣用名、IUPAC名、構造式を次の表で示します。
慣用名/
IUPAC名
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構造式
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α-カロテン
(α-Carotene)
β,ε-カロテン
(β,ε-Carotene) |
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β-カロテン
(β-Carotene)
β,β-カロテン
(β,β-Carotene) |
緑黄色野菜に含まれる
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γ-カロテン
(γ-Carotene)
β,ψ-カロテン
(β,ψ-Carotene) |
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δ-カロテン
(δ-Carotene)
ε,ψ-カロテン
(ε,ψ-Carotene) |
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ε-カロテン
(ε-Carotene)
ε,ε-カロテン
(ε,ε-Carotene) |
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リコピン
(Lycopene)
ψ,ψ-カロテン
(ψ,ψ-Carotene) |
トマトや柿に含まれる
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キサントフィル
炭化水素だけのものをカロテン類 (carotenes)、末端に酸素を含むものをキサントフィル類 (xanthophylls) といいます。末端が失われたものは、アポ(apo)
をつけ(アポカロテノイド)、残った末端炭素の位置番号を付けます。一端を失ったものはアポカロテン( apocarotene)、両端を失ったものは
ジアポカロテン(diapocarotene)となります。
慣用名/
IUPAC名
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構造式
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ビキシン
(Bixin)
6'-メチル=水素=9'-cis-6, 6'-ジアポカロテン-6, 6'-ジオアート
アナトー色素 |
(6'-methyl hydrogen 9'-cis-6, 6'-diapocarotene-6, 6'-dioate) |
カプサンチン
(Capsanthin)
(3R, 3'S, 5'R)-3, 3'-ジヒドロキシ-β,κ-カロテン-6'-オン
トウガラシ色素 |
((3R, 3'S, 5'R)-3, 3'-dihydroxy-β, κ-caroten-6'-one) |
クロセチン
(Crocetin)
8, 8'-ジアポカロテン-8, 8'-二酸
クチナシ黄色素 |
(8, 8'-diapocarotene-8, 8'-dioic acid) |
IUPAC名と慣用名
化学式の読み方も、いろいろあって混乱し、困った時があります。ドイツ語、英語の他に、アミノ酸、糖、など研究分野で命名の習慣が違っていたためです。このような混乱を防ぐために、国際純正応用化学連合 (International Union of Pure and Applied Chemistry)は、命名法を統一してIUPAC命名法を決めました。化学以外の生化学などの分野でも、化学と統一するために、IUPACと同様の命名法を決めました。
IUPAC-IUBとは、国際純正応用化学連合−国際生化学連合(International
Union of Pure and Applied Chemistry - International Union of Biovhemistry and Molecular Biology)で定めた命名法です。
(http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/)
その中に、カロテノイドの命名法もあります。
(Nomenclature of Carotenoids http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/carot/)
しかし、すべてをIUPAC名にすると複雑で、これまで使ってきた名前の方が便利だとの意見もありますので、ある程度慣用名も許されています。たとえば、アミノ酸をすべてIUPAC名にすると、かえって分かりにくくなってしまいますので、アラニンとかグリシンなどの慣用名がよく使われます。
CAS名と番号
CASとは、Chemical Abstracts Serviceのことで、アメリカ化学会(American Chemical Society)が出版している化学要旨集のことです。世界中で出版される化学の専門雑誌の要旨を集めたものです。そこには、多くの化合物が出てきますので、それぞれに番号を付けて(CAS番号)、名前を付けています。命名はIUPAC名に従っていますが、慣用名も使っています。IUPAC名の他にも慣用名でも検索できますし、構造式からの検索もできます。
化学構造式から、スペルも間違えずに正確に名前を付けるのは困難ですが、化学構造式を描くソフトのChemDraw (http://www.cambridgesoft.com/)を使うと、簡単に名前を知ることができます。
α、βのいろいろ
化学では、いろんな所でα、βが使われています。
カルボン酸では、隣の炭素から順にα、β、γと付けていきます。
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COOHの隣のCH2から、α、β... |
α-アラニン2-aminopropanoic acid
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β-アラニン3-aminopropanoic acid
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環状の糖では、下に-OHが付くとα、上に-OHが付くとβと呼びます。
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α-D-Glucopyranose
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β-D-Glucopyranose
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タンパク質のらせん構造はαらせん、分子間の水素結合はβ構造です(Q 50)。
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αらせん構造
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β構造(平行:緑と、逆平行:ピンクがある)
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