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    空はどうして青く、夕焼けはどうして赤いのですか?
   


 晴れた日の空は真っ青ですが、そんな日に夕方になって太陽が沈むころ、赤、ピンク、オレンジなどのきれいが夕焼けが見られます。どうして日中の空は青く、夕日は赤いのでしょうか?
 月から見た地球の写真を見ると、空が黒いのがわかります。月には空気が無いので、空は黒く、夕焼けも無いのです。青い空や夕焼けは地球の空気が原因であることがわかります。

美しい夕焼け

月から見た地球(NASAの映像)

 まず、地球の外側の大気圏を見てみる必要があります。大気中には窒素(78%)、酸素(21%)が最も多いガスです。次に多いのはアルゴンと水です。その他、いろいろのガスがありますが、埃や塵など、砂や塩などの小さな粒も浮遊しています。火山の噴火があれば火山灰が多いでしょうし、海岸では塩の粒が多いでしょうし、日本の春は花粉や黄砂が多いでしょう。地球には引力があるので、重くて大きな粒子は地球の近くにあります。地球より遠くなると、だんだん軽くて小さな粒子になり、窒素や酸素だけになり、さらに遠くなると空気もない宇宙の世界になります。

地球を取り巻く物質

 次に、太陽の光を見てみましょう。光は電波と同じ電磁波で、宇宙空間は299,792 km/sec の早さで進みます。電磁波のエネルギーは、その波長と周波数によって決まります。波長とは波の頂上から頂上の距離で、電波は1 m以上の長さですが、光は400-700 nm(ナノメーター)の長さです(nmは100万分の1ミリ)。周波数とは、1秒間に波が何個進むかを表します。波長が短くなり、周波数が高くなると、エネルギーは大きくなります。
 太陽の光は白色光で、多くの波長の光が集まったものです。太陽光をプリズムで通して見ると、虹のようにいろいろの色の光に分かれるのが分かります(スペクトルといいます)。光の波長によって、赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫と、光の色が違い、エネルギーも違います。赤い光は波長が最も長く、周波数は最も低く、エネルギーも最も小さいのです。白色光は全ての波長の光が集まったものですが、これをR(Red 赤, 600-700 nm)、G(Green 緑、500-600 nm)、B(Blue 青、400-500 nm)の三原色に分けることができます。色はもっと他にもあるのですが、この三原色の組み合わせで表すことができます。また逆に、光の三原色であるRGBの三つの光を合わせると、波長が400-700 nmの光になりますので、白色になります(加法混色)。

プリズムによる分光

波長により色が変わる

 さて、太陽の白色光が宇宙を旅して地球に近づくと、まず窒素や酸素の分子に衝突します(地球から9-10 Km)。しかし、窒素や酸素分子の大きさは、光の波長に比べて小さいので、反射することはありません。光が反射するのは、光の波長よりも大きな粒子です。砂浜にうち寄せる海の波を見てみましょう。小さな岩があっても波は無視しますが、大きな岩があると波は当たって砕けて白波になります。波の波長より大きな岩に当たった時だけ反射するのです。他の例では、O-157のようなバイ菌は光の波長より大きいので、光学顕微鏡で見ることができます。しかし、インフルエンザのウイルスは光の波長より小さいので、光学顕微鏡では見ることができず、波長の短い電子顕微鏡でしか見ることができません。
 大きな赤い物体に光が当たると赤の光を反射して、赤く見えます。物体が小さくなると反射しなくなり、赤く見えなくなります。物体が小さくなると反射は無くなり、散乱が起きるのですが、もはや物体の色である赤には見えません。光の散乱は、粒子の大きさにより三つの散乱が起こります。粒子が波長より小さいときは、レイリー散乱、波長と同じ程度の大きさではミー散乱、波長より大きいときはいろんな波長を散乱する非選択的散乱です。タバコから出る煙は青く見えますが、白い紙を当ててみると煙が青いわけではありません。煙の粒子が小さく、レイリー散乱が起こっているのです。同じタバコの煙でも、口からはき出される煙は白く見えます。煙の粒子に水蒸気が付いて、大きな粒子になったので、レイリー散乱ではなくミー散乱や非選択的散乱が起こり白く見えるのです。

粒子の大きさと散乱の種類

 粒子が波長より小さいと光は粒子を認識しないのですが、光は電磁波ですし、窒素や酸素も原子核や電子を持っていて極性を持っていますので、何らかの影響があります。このような光の波長より小さい物体(1/10より小さい)に光が当たると、反射はありませんが、散乱が起こるのです(レイリー散乱、Rayleigh scattering)。レイリー散乱は光の進行方向に進み、散乱の強さは光の波長に依存し、波長が短い(青)方が大きく、波長が長い(赤)と小さいのです(この理由は難しいので省略しますが、青は赤に比べて10倍散乱します)。ともかく、青い光は窒素や酸素分子で散乱し、いろんな方向に青の光を出すのです。われわれが地球からこれを見ると空が青く見えるのです。実際は紫が最も多く散乱されているのですが、人間の目の構造上、青く見えるのです。

大気の薄い層でのレイリー散乱(青を散乱)

 レイリー散乱は、地球上でも見ることができます。オリンピックが開かれたオーストラリアのシドニーから西へ100キロのところに、ブルーマウンテン(青い山)があります。この山は、青く見えるのです。その理由は、オーストラリアにたくさんあるユーカリの木のせいなのです。ユーカリの木はコアラが住んでいることでも有名ですが、油がとれることでも有名です。ブルーマウンテンではユーカリの木から、油の分子が空気中に出ています。この油の分子が光の波長より小さな200 nm程度の大きさになり、これに太陽の光が当たり、レイリー散乱が起こり、山が青く見えるのです。

シドニー近くのブルー・マウンテン

 さて、夕方になって太陽が西の空に沈みかけると、夕焼けになります。日中は太陽の光が真上から来るので、通ってくる空気の層の距離は短いのですが、夕方は斜めに地球に来るので、通ってくる空気の層の距離がが長くなります。青い光は途中で散乱してしまうので、地球に到着するのはほんの少しになります。その点、赤い光は散乱が少ないので、多くの光が地球に到達することができます。これが、夕焼けが赤い理由です。
 海で見る夕焼けはオレンジに見えます。これは、海から飛び出た塩の結晶によるレイリー散乱のためと言われています。海の水が青く見えるのは、空の青が写っているからですが、海に潜って見た海の水が青いのは、別の理由です。これは、太陽の光のうち、赤い光が海の水の分子に吸収され、残った光が青く見えるのです。(海が青く見える理由は状況により異なりますが、正確には海面からの光の反射と海中の青い光が海底や浮遊物に反射して海面に出てきた光の合わさったものです。海は波があるので分かりにくいですが、海面からの光の反射は強いので、海の状況によらず青空の反射が海の青の大きな理由と考えられます。)

夕日は厚い空気の層を通るので赤以外は散乱される

 太陽の光がもっと地球に近づくと、光の波長と同じかもっと大きな粒子があり、レイリー散乱とは違うミー散乱(Mie Scatterling)が起こります。塵、花粉、煙、水蒸気などです。ミー散乱は、レイリー散乱とは異なり、波長の長い赤い光をよく散乱しますが、散乱の方向は光の方向です。火山の噴火による火山灰の大きさは、光の波長と同じぐらいの500-800 nmで、ミー散乱で赤く見えます。

光の波長と同じ大きさの粒子によるミー散乱

 さらに地球に近づくと、光の波長よりずっと大きな粒子(5-100 μm)(マイクロメーター(μm)は1000分の1ミリ)に太陽光が当たり、散乱します。この散乱は非選択的な散乱で、いろんな方向にいろんな波長の光を散乱します。水滴や大きなホコリによるものです。霧や雲は大きな水滴ですので、全ての波長の光を散乱して白く見えます。また、赤外線も散乱するので、太陽が雲に隠れると、暖かさがなくなります。

大きな粒子による非選択的散乱

 光の波長と粒子の大きさの関係は重要です。波長よりも小さな粒子は、光は認識せず通り抜けます。タコやイカが皮膚の色を変えるのは、これを利用しています。色素の粒を小さくすれば無色になり、大きくすれば色がつきます。窒素や酸素の分子は光の波長よりも小さいので、われわれの目には見えませんが、地球や宇宙は大きいので、このような小さな粒子と光の影響が見られるのです。可視光線より波長の短い紫外線は、オゾン、炭酸ガスなどの大気の分子に吸収されます。したがって、地球に到達する紫外線の量は少なくなりますが、オゾン層が破壊されると、地球に来る紫外線の量が多くなります。

 

 

   
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