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   ルミノール反応とはどんな反応ですか?
   

 

 ルミノール(luminol)反応とは、ルミノールという化合物が酸化されて、3-アミノフタル酸になる反応で、青色の蛍光がでるのが特徴です。いわゆる化学発光です。まず、ルミノール反応の実験をしてみましょう。
 A液は、ルミノールを水酸化ナトリウム水溶液に溶かし、過酸化水素水(オキシフル、H2O2)と混合したものです。B液は、フェリシアン化カリウムの水溶液です。A液にB液を加えると、青い蛍光が発します。(映像[*1]を見るには、QuickTimeェ Plug-in [*2]が必要です。)

ルミノール反応の実験

  A液
0.1%ルミノールを含む
10% 水酸化ナトリウム水溶液と
15%過酸化水素水を10:1の割合
で混合した溶液。


B液
20% フェリシアン化カリウム
(ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、
K3 [ Fe (CN)6 ] )水溶液。


A液にB液を滴下すると、青い蛍光を発する。
     

 

 この反応は、ルミノールが過酸化水素により酸化されて3-アミノフタル酸ができる反応で、鉄などの金属イオンや錯体が触媒となります。ルミノールが酸化されると、直接3-アミノフタル酸になるのではなく、途中に3-アミノフタル酸の励起一重項状態ができます。この励起一重項状態が安定な3-アミノフタル酸の基底状態になるときに青色の蛍光がでるのです。(蛍光のでる仕組みは、Q16を見てください)基底状態の3-アミノフタル酸に光をあてて励起一重項にすると、同じような青い蛍光がでることからも、下の反応式が確かであることがわかります。
 この反応は鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)などのイオンや錯体が触媒になります。イオンとは、たとえば鉄の原子(Fe)から電子が抜けたもので(Fe3+)、錯体とはFe3+にアミン(-NH2)などがくっついたものです。触媒とは、これがないと反応は非常に遅いのですが、触媒があると反応が速くなります。

ルミノール反応

 ところで、殺人事件の現場で、犯人が血液をきれいに拭き取ったのに、鑑識の人が液をかけてランプを照らすと、血痕から青い光が浮き出るのを、サスペンスドラマで見たことがありませんか。かけた液はルミノール溶液で、青い光が蛍光です。
 血液の中の赤血球にはヘモグロビン(hemoglobin)というタンパク質が含まれています(下の左図)。ヘモグロビンには、ヘム(heme)という鉄錯体(下の図の赤い部分、右の化学式)が含まれていて、酸素を運搬する働きがあります。血液が赤いのは、この鉄錯体の色です。ヘムはクロロフィルと構造が似ていますが、クロロフィルはマグネシウム(Mg)錯体です。ヘムは鉄の錯体です、ヘムが触媒となって、ルミノール反応が進行し、青い蛍光が見えたのです。血液を拭き取ったり、時間がたって乾いてしまっても、微量の鉄錯体が残っているので、ルミノール反応が起こったのです。

ヘモグロビンの分子モデル(四つのタンパク質が集まっている)赤い部分がヘム

 生物発光として知られている、ホタルやウミホタルの光も同じような酸化反応から生じるのです。ホタルでは酸化される物質はルシフェリンで、酸化は酵素のルシフェラーゼが行っているのです。

 ルシフェリンが酸化されて励起一重項ができ、これから安定な基底状態になるときに蛍光がでます。ところが、この励起一重項はpHによって下の式のような平衡にあります。したがって、酸性(pH 5.6)では赤い蛍光(616 nm)、中性(pH 7.6)では黄緑色の蛍光(565 nm)がでます。

ホタルの生物発光

*1) 映像は中條 敏明さんによるものです。 http://rd.vector.co.jp/soft/dl/mac/edu/s0043455.html
*2) QuickTime Plug-Inは次のサイトから。http://www.apple.co.jp/quicktime/index.html

 

   
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