まず、白黒写真の原理を見てみましょう。白い紙に黒でAの文字が書かれた物体の写真を撮ります(露光)。白い紙に当たった光は反射され、カメラの中にあるフイルムに当たります。フイルムには臭化銀(AgBr)が塗ってあり、光により還元されて銀(Ag)ができます。黒いAの文字に当たった光は吸収されて反射しません。フイルムではこの部分には光が当たらず、臭化銀のままです。
次にフイルムを現像します。光の当たっていない黒いAの文字の部分は臭化銀ですから、現像で洗い出され透明になります。光の当たった白い紙の部分には銀ができているので黒く残ります。物体の白と黒が、現像後のフイルムでは逆の黒と白になりますので、ネガといいます。
こんどは、このネガフイルムを使ってプリント(焼付)します。白い印画紙の上にネガフィルムを置いて、上から光を当てるのです。ネガの透明の部分は光が通り印画紙に当たるので、プリントでは黒くなります。一方、ネガの黒い部分は光が通らないので、プリントでは白くなります。これで、物体の白と黒が、正しくプリントに再現されたわけです。
白黒写真の原理
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ところで、カラー写真の原理はどうでしょうか。光で反応するのはやはり臭化銀ですから、可視光線での吸収が無く、カラーの区別がつきません。そこで、赤や青などに感じる感光色素を加えるのです。下の図は簡単のため青、緑、赤を使った原理を示しています。フイルムには青・緑・赤を感じる層があります。青い物体(緑と赤の光を吸収)から反射された青い光は、青い光を吸収する感光色素に吸収されます。緑の光は緑の感光色素に、赤い光は赤の感光色素に吸収されます。
光を吸収した感光色素は近くの臭化銀(AgBr)にエネルギーを与え、臭化銀は還元されて銀(Ag)になります。これでは、どんな色の光でも銀ができることになります。(実際の白黒フイルムにも感光色素が含まれているので、色はついていないのに目で見たような写真が撮れるわけです)
カラー写真の原理
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もう少し詳しく見てみます。パソコンのRGB(赤・緑・青)の色はプリンターではCMY(シアン・マゼンダ・イエロー)の色に変えて印刷することをQ18で述べました。物体に当たった太陽光(白色光)はRGBの光の色を反射し、人間の視神経でRGBの色で認識します(Q1)。しかしカメラに入ったRGBの光はフイルムに入って、プリンターと同じくCMYの色でネガフイルムに記録されます。フイルムでの記録は色素を使うので、光のRGBでは記録できず、色素のCMYで記録する必要があるのです。
青い物体は緑と赤の光を吸収し、青の光を反射します。青い光がカメラ内のフイルムに当たると光反応が起こりますが、光反応で生成するのは色素ではなく微量の還元された銀です(潜像といいます)。青を吸収する感光色素には、あらかじめカップラーという薬品が加えてあり、現像の段階でカップラーが反応して黄色の色素ができます。同様に、緑を吸収する感光色素からはマゼンダの色素が、赤の感光色素からはシアンの色素ができるのです。
写真の撮影と現像
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それぞれ生成する色素は、吸収した色の補色であることに気が付きましたか?下の図に、ポジとネガの写真を載せました。色が補色になっているのがわかります。もちろん、黒は白に、白は黒になっています。ネガフイルムが補色であるのは、もちろんプリントで物体の正しい色を再現するためです。フイルムが左の写真のようだと、プリントでは右のようなおかしな写真になってしまいます。ただし、プリントではなくスライド写真を作るときは、フイルムで左のように物体の色が再現されています。
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物体とプリント(ポジ)
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ネガフイルム(左と補色の関係)
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カラー写真をプリントするときには、ネガフイルムに白色光を当て、通り抜けたRGBの光がプリント用紙に当たりCMYの色素でプリントされます。プリント用紙(印画紙)の上にネガフイルムをのせて白色光を照射すると、ネガフイルムの黄色の像は青色の光が吸収して黄色の光を出します。黄色の光は緑と赤の光の混合ですので、緑と赤の光がプリント用紙に当たります。プリント用紙では、緑の光からマゼンダの色素が、赤の光からはシアンの色素ができるようにしてあります。このプリントから反射されるRGBの光はマゼンダやシアン色素が吸収しない青い光で、人間の目には青い像として認識されます。したがって、プリントでは、物体の色の、「補色の補色」となり、元の物体の色が再現されるのです。ややこしいですが、光はRGB、色素はCMYと考えてください。
ネガフイルムからカラー写真のプリント
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代表的なカップラーの反応を次の式で示します。現像液の1-ジエチルアミノ-4-アミノベンゼンが銀イオンと反応して、キノンイミン型化合物が生成する。これが、イエローカップラーと反応すると黄色の色素ができます。同様に、マゼンタカップラーからはマゼンダ色素が、シアンカップラーからはシアン色素ができます。
ここでは、カラー写真の原理を簡単に示しましたが、カラー写真は複雑で実際には多種類の薬品が混合されています。カラーのネガフイルムやプリントは色素からできていますので、光や酸化により変色する場合があります。
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