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    ルーエマンパープルという色素はどのようなものですか?
   

 

 ルーエマンパープル(Ruhemannn's purple)は、紫色の色素ですが、染色や食用色素に使われるものではありません。ニンヒドリンとアミノ酸からできる色素です。
 犯人の指紋を検出するのに、鑑識係の人がアルミニュウムの粉をかけているのを、テレビドラマで見たことがありませんか。ガラスや机に付いた指紋はあれで検出できるでしょうが、ざらざらの紙の上に付いた指紋は検出できるのかな、と思ったことはありませんか。そのようなときは、ニンヒドリンという薬品の溶液を紙に吹きかけて、ドライヤーで加熱すると、指紋が紫色に浮き出てくるのです。この紫色の色素が、ルーエマンパープルなのです。ルーエマン(Ruhemannn)が見つけた色素です。
 人間はタンパク質、核酸、脂質などからできています。もちろん60%以上は水です。ですから、人間の皮膚にはタンパク質やアミノ酸が沢山付いています。ちなみに、タンパク質はアミノ酸が結合してできたものです。ニンヒドリンはタンパク質やアミノ酸と反応し、次いで加熱すると紫色のルーエマンパープルができるのです。

アミノ酸とニンヒドリンの反応でルーエマン紫の色素ができる。

 アミノ酸にはアミン(-NH2)とカルボン酸(-COOH)が含まれていますが、反応するのはアミンの方です。タンパク質はアミノ酸が結合してできたもので、途中はアミド結合(-CO-NH-)で、アミンはありませんが、一番端はやはりアミンとカルボン酸ですから、やはりニンヒドリンと反応します。下の式は6個のアミノ酸が結合してペプチド(タンパク質)ができた様子を示しています。-NH2と-COOHから、アミド結合(-CO-NH-)ができています。
 ニンヒドリンのアミノ酸との反応は指紋を検出するだけではなく、アミノ酸を分析するのに使われます。人間のタンパク質はおよそ20種類のアミノ酸からできているのは知っていますね。上のアミノ酸の式でRは色々あって、アミノ酸の種類によって違います。いろんなタンパク質がありますが、それはアミノ酸の種類と並び方が違うのです。アミノ酸の種類と並び方を決めているのは、遺伝子であるDNA (デオキシリボ核酸)です。DNAに書かれている情報にしたがって、必要なタンパク質が作られているのです。タンパク質は身体の中でどんどん作られ、いらなくなったタンパク質は身体の外に排泄されているのです。いらないタンパク質やアミノ酸は汗や尿に含まれて出てきます。

6種類のアミノ酸から1種のタンパク質ができている例


 タンパク質がどのようなアミノ酸が結合しているかを決めるのに、アミノ酸分析計を使います。次にその原理を示します。

アミノ酸分析計の原理

1)タンパク質をばらばらに切断してアミノ酸にします。

2)その液をカラムの上にのせます。カラムとはガラスや金属製の筒で、中には充填物が入っていて、先端には目皿があって充填物は流れないが水などの液体は流れます。

3)カラムの上から水を流します。すると、アミノ酸は水と一緒に下に出てきます。充填物に吸着しやすいアミノ酸はついたり離れたりしながら出てくるので、時間がかかります。充填物に吸着しにくいアミノ酸は早く出てきます。

4)カラムから出てきたアミノ酸の溶液に、ニンヒドリンを加えて加熱します。

5)アミノ酸があるとルーエマン紫ができて、着色します。

6)ルーエマン紫の濃度を吸光度で分析します。(Q15の色価参照)

7)縦軸に吸光度、横軸に時間をプロットすると、下のチャート(グラフ)が得られます。

8)ピーク(山)の面積から、アミノ酸の量を決定します。

 それぞれのアミノ酸は性質が違うので、出てくる時間が違います。約30分で出てくるアスパラギン酸(Aspartic acid)はカラムの充填物に吸着しないので、早く出てきます。一番遅いイソロイシン(Isoleucine)は、カラムの充填物に吸着しながら出てくるので、70分もかかります。カラムから出てきたアミノ酸は、ニンヒドリンで着色し、その色の濃さで検知しています。

 アミノ酸と反応して着色すればいいので、別にニンヒドリンである必要はありません。ニンヒドリン以外にもいろんな試薬があります。つぎのものはその一例です。微量のタンパク質を分析するには高感度が必要ですので、反応したものが蛍光を発するものは感度が高いので、微量の分析に使われます。オルトフタルアルデヒド(OPA: o-Phtalaldehyde)とN-アセチルシステインを使うと、蛍光物質が生成するので、蛍光の強さからアミノ酸の量を決定することができます。蛍光を使うと、感度がニンヒドリンに比べて約70倍高くなります。蛍光物質については、Q16を見てください

アミノ酸とオルトフタルアルデヒドから蛍光物質ができる

 身体にはいろんなタンパク質があって、そのタンパク質がなんらかの病気に関係している場合があります。ですから、そのタンパク質の分析ができると、病気の発見につながる場合があるので、タンパク質の分析は重要です。

 同じくサスペンスドラマで、カーペットに付いた古い血痕を、やはり鑑識係の人が調べる場面があります。薬品をかけて、ランプで照らすと青く光る場面です。血液にもタンパク質アミノ酸が含まれますが、あれはニンヒドリン反応ではありません。その答えは、次のQ22で、お答えします。

 

   
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