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   化学反応とは何ですか?
   


 シアン色素とイエロー色素を混合すると緑色の色素ができますが、なにか化学反応が起こったのでしょか?。赤い色素とその他の成分を混ぜて口紅を作る過程で、化学反応が起こっているのでしょうか?化学反応はなにも起こっていません。いろんな成分が混ざっただけです。では、化学反応とはどんなものでしょうか?

 お酢とお酒を混ぜてもなにも起こりませんが、お酢の成分である酢酸(CH3COOH)と、お酒の成分であるエタノール(CH3CH2OH、アルコールの仲間)が化学反応すると、酢酸エチル(CH3COOCH2CH3)というエステルができます。酢酸エチルはシンナーの臭いの成分です。では、化学反応が起こるためにはどのようにすればいいのでしょうか?

 酢酸とエタノールから酢酸エチルができるためには、エネルギーの高い山を越えなければならないのです。そのため、混ぜただけでは反応は起こらないのです。

化学反応のエネルギーの山

 酢酸エチルができるためには、酢酸の-OHとエタノールの-Hがはずれて、新たに酢酸のCとエタノールのOとの間に結合ができる必要があるのです。結合を切ったり作ったりするためにはエネルギーが必要なので、それが上の図の山に相当します。

酢酸とエタノールの化学反応

 では、どのようにすれが、反応が起こるのでしょうか?山を越えるためにはエネルギーが必要です。ハイキングに行って、山に登るにはお腹が空いていては登れませんね。
 酢酸とエタノールにエネルギーを与えるには、加熱すればいいのです。温度が高くなると酢酸とエタノールにエネルギーが移り、激しく動き回るようになります。そのうち、2つの粒子が衝突することがあります。すると、2つの粒子は高いエネルギーを持って山を越えることができるようになるのです。そうして、結合が切れて新たに水(H2O)ができ、酢酸エチルができるのです。

加熱による反応

 もう一つの方法は、山を低くしてやればいいのです。それには触媒というものを使います。この反応では、硫酸(H2SO4)などの酸(H+で表しています)や、苛性ソーダ(NaOH)などの塩基(OH-で表します)などの触媒を使います。硫酸では[H2SO4→H+ + HSO4-]によりH+ができて、これが働くのです。苛性ソーダでは[NaOH→Na+ + OH-]によりOH-が働くのです。
 硫酸を使うと、H+が酢酸に働いて、CH3-C+(OH)2ができ、これとエタノールとが反応します。その反応でのエネルギーの山は、元の(触媒のない時)山より低くなります。したがって、そんなに加熱しなくても反応が起こるようになります。NaOHを使ったときにも、途中でできるものは違いますが、やはりエネルギーの山が低くなって、反応が起こり酢酸エステルと水ができます。
 触媒は反応の途中では反応式に現れますが、反応が終わると元のH+になります。ですから、全体の反応式には触媒は無いのです。反応の途中で山の高さを低くするために働くだけです。

触媒による反応


 上の図では反応は左から右に起こっていますが、よく見ると、右から左にも反応が起こりそうですね。もし、反応が右から左に起これば、エステルの加水分解になります。下の図は塩基(アルカリ)による加水分解です。酢酸エチルにOH-が働いて、できたものに水が働き、酢酸とエタノールができます。

苛性ソーダによるエステルの加水分解反応

 酢酸とエタノールから酢酸エチルができる反応は、右にも左にも進行し、可逆反応といいます。反応の種類によっては1方向しか起こらないものがあり、非可逆反応といいます。
 可逆反応では、右向きと左向きとが同時に起こるので、ある程度反応が進むと、右向きと左向きとの反応の速さがが同じになり、見かけ上、反応が止まったように見えます。これを、化学平衡といいます。(化学平衡は次のQ&Aを見てください)

化学平衡

 化学反応とは、結合が切れて新たに結合ができ、原料とは違うものができることです。いろんなものを混ぜると、原料とは違うものができますが、それは単に混合物で、新しい化合物ができたわけではありません。
 シアン色素とイエロー色素を混ぜると緑色になりますが、これはシアン色素とイエロー色素が光を吸収して緑色に見えるだけで、緑の色素ができたわけではありません。緑の色素としてクロロフィルがありますが、合成の緑の色素を作るのは難しいです。
 色素やいろんなものを混ぜて口紅を作ると、新しい口紅という物はできますが、それは混合物であって新しい口紅という化合物ができたわけではありません。
 紅茶に砂糖を入れると反応はしなくて混合だけですが、紅茶にレモン(クエン酸)を入れると反応して色が消えます。

混合と反応

 

   
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