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    いろいろな質問(科学一般その3)
   
 アルコールに水を溶かした後に油を入れると油は溶けないのに、アルコールに油を溶かした後に水を入れると、油と水が溶けるのはどうしてですか?
 まず、どうして油が水に溶けないのか考えましょう。
 水は極性があり、油は極性がないので、水と油が互いに結合せずに混ざりにくいのです。したがって、水と水、油と油が結びついた方がいいのです。
 アルコールは水と油の中間の性質を持っているので、水とも油とも結合し、それぞれに溶けるのです。
 さて、油をアルコールに溶かして、水に入れると溶けます。油をアルコールに入れると、油の分子にアルコールがついて、アルコールに溶けるのです。これを水に入れると、油ーアルコールー水となって、水に溶けるのです。アルコールは水と油の橋渡しの役目をしています。でも、水が多いので、一度加熱すると油ーアルコールが切れてしまいますので、冷やすと油ー油ができて濁ってきます。
 次に、アルコールを水に溶かして油を入れると、アルコールー水ができているので、アルコールは油に付く余裕はありません。したがって、油は溶けません。でも、水とアルコールの割合を変えて、アルコールが余っている状態にすると、油も溶けるようになります。
 
 小学生ですが、エーテル、プロピレングリコールとは何かを教えて下さい。
 化学式というアルファベットが出てきますが、記号だと思ってください。音楽を説明するには、ト音記号を使いますが、それと同じように、化学では化学式を使います。
 お酒の成分である、エタノールは知っていますか?メタンガス、エタンガス、プロパンガスはわかりますね。いずのガスも水には溶けないものです。
 水は、H-O-Hですが、メタンガス(CH4)に(-O-H)が付くと、CH3-O-H(メタノール)になり、水に溶けるようになります。エタノールは、エタンガス(CH3-CH3)に(-OH)が付いた、CH3-CH2-OHです。このように(-OH)が付いたものをアルコールと呼びます。お酒の成分のエタノールもアルコールの仲間です。アルコールは水にも溶けますし、油にも溶けますので、重要な物質です。
 エタンガスに(-OH)が2つ付くと、エチレングリコール(HO-CH2-CH2-OH)になります。エタノールにもう一つ(-OH)が付いたのと同じです。-OHが付くと、なかなか沸騰しなくなります。エタンはガスですが、エタノールは78℃で沸騰しますが、エチレングリコールは200℃にならないと沸騰しません。また、水にエチレングリコールを加えると、水が0℃で凍らなくなり-10℃で凍ります。この性質を利用して、寒いところでは、自動車のラジエーターにエチレングリコールを入れます(不凍液です)。プロピレングリコールは、プロパンに-OHを2つ入れた物です。
 エーテルはメタン2つに酸素が中間に入ったものです、CH3-O-CH3。水には溶けません。エーテルは37℃で沸騰します。
 木の葉の緑はクロロフィルという物質ですが、水には溶けず、油に溶けます。葉からクロロフィルを取り出すとき、葉を少し水を入れてミキサーにかけ、プロピレングリコールを加えます。すると、クロロフィルが溶け出します。
 溶けない成分をろ過して、加熱すると水が沸騰して無くなり、クロロフィルが溶けたプロピレングリコールができます。これにエーテルを加えると、クロロフィルはエーテルに溶けます。上澄みのエーテルを取り出し、加熱するとエーテルが沸騰し、きれいなクロロフィルが取れます。 
 これ以外にもいろんな薬品があり、それぞれ性質が違いますが、うまく利用して色素を取り出すのです。
 
 合成した後の合成物と原料の分離方法を教えてください。通常は薬品、沸点差とかあると思うのですが、原料も合成物もおなじ有機系でメタノールで精製を行うと両方溶解してしまいます。また、合成物が世の中に出ていないものの場合、どのようにして精製をおこなうのでしょうか。
 合成した後の合成物と原料の分離方法にはいろいろとあります。
 まず、合成物が気体か、液体か、固体かによって分離方法が異なります。気体や沸点の低い液体では、蒸留で分離しますが、沸点が似ている時はやガスクロマトグラフィーを使います。
 沸点の高い液体では、カラムクロマトグラフィーを使います。
 固体(結晶)の場合は、再結晶で分離します。
 溶媒で抽出する方法もありますが、極性の異なる溶媒を調べて、原料または生成物の一方だけを溶かす溶媒を用います。
 メタノールに全て溶けるときは、もう少し極性の低い溶媒を使うといいでしょう。原料の溶ける溶媒と溶けない溶媒を調べるのが最初です。合成物も原料に性質が似ているはずですから、そのへんの溶媒を使ってみることです。
 新規な化合物の場合は、原料は分かっているのですから、原料とは異なる物質を分析方法で確認する必要があります。たとえば、薄層クロマトグラフィーなどで新規な物質の存在を確認します。
 
 色素が塩素で漂白されるのは何故ですか?
 Q&Aのあちこちにありますように、色素をはじめとして色が着いているものは全て二重結合が含まれています。漂白は、この二重結合を無くすことです。
 そのためには、1)酸化して二重結合を分解する[ -C=C- → -COOH + HOOC- ] か、2)還元して二重結合を飽和させるか[ -C=C- → -CH-CH- ]です。
 塩素は二重結合に付加できますので、反応により二重結合が無くなるのです[ -C=C- + Cl2 → -CCl-CCl- ]。
 塩素をそのまま漂白剤に使うことはなく、次亜塩素酸ソーダNaClOなどが使われ、これは酸化剤です。
 繊維の漂白剤では、繊維とは反応せず、いやな色だけが反応してほしいですから、難しいですね。
 
 白いシャツを着ているときと黒いシャツを着ているときでは、日光の当たるところにいると暑さが違います。色々な色とこの暖かさの違いはどうしておこるのですか?
 暑さは可視光線(青、緑、赤)ではなく、赤外線、遠赤外線によるものです。
 赤外線とは、可視光線よりもっと波長の長い光線で、人間の目には見えないものです。可視光線より波長が短くなると紫外線です。
 太陽光線には、紫外線、可視光線、赤外線、もっと波長の長い光線が含まれています。赤外線が皮膚に当たると、水やタンパク質の分子が吸収し、分子が激しく運動するようになります。血液の水分子が、このエネルギーを身体全体に運び、暑くなります。ストーブに手をかざしたり、こたつに足を入れるだけで暖かくなるのはこのためです。
 電気コンロはニクロム線ですが、赤い光とともに赤外線が多く出ているので暖かく、エネルギーが鍋に移動して、さらに鍋から水に移動して、水分子がエネルギーを得て温度が高くなります。
 電子レンジはマイクロ波という赤外線よりも波長の長い電磁波ですが、水が吸収することができますので、水は温かくなりますが、タンパク質は吸収することができず、温かくなりません。水が含まれていない干物を電子レンジにかけても温かくなりませんね。
 白いシャツは可視光線も反射しますが、赤外線も反射するので、裸よりは暑さは違います。
 黒いシャツの場合、可視光線と赤外線を吸収するので、本当は暑くないはずです。ただし、シャツが熱くなり、それから皮膚に移動するために、暑く感じるかもしれません。
 赤や緑など色シャツの場合は、その色の可視光線を反射するだけですから、赤外線は部分的に通ります。
 金や銀は全ての光線を反射してしまいますので、基本的には暑くないはずですが、赤外線で熱くなり、エネルギーが皮膚に移動する可能性はあります。
 人間の熱は、汗が蒸発して下がりますので、湿度は重要です。日本は湿度が高いので、シャツを着るよりも裸の方が汗が蒸発して、気持ちがいいですね。でも、砂漠では湿度が低く汗をかきませんので、裸では直接太陽光線が当たって暑く、シャツを着ると、光線が遮られて涼しくなります。
 
 小学生の質問ですが、耐熱性、耐光性とはなんですか?
 ポリエチレンという透明な袋がありますね。スーパーで野菜などを入れる袋です。お母さんは台所で使っていると思いますし、容器もあります。容器の裏に「ポリエチレン」と書いてある物を加熱すると、100℃で溶けてしまいます。
 沸騰した水をこの容器に入れると、溶けて火傷をする場合がありますので、最近では「耐熱性」のある「ポリプロピレン」を使います。容器の裏に「ポリプロピレン」と書いてある容器や洗面器は、150℃まで加熱しないと溶けません。これだと安心ですから、台所でよく使います。でも、熱い油を入れると溶けますので、注意しないといけません。
 耐熱性とは、熱に対して耐性があるということです。溶けなくても分解する物もあります。
 コンパクトディスク(CD) の入っている透明な入れ物がありますね。それは、ポリスチレンというプラスチックです。これには「耐光性」がありませんので、太陽の当たる外に置いておくと、ボロボロになってしまいます。
 ガレージの屋根や、看板に使う透明なプラスチックはアクリルという、耐光性のあるものです。太陽(光)に当たっても分解しない(耐性)のです。このように、光に強いものが耐光性があるといいます。
 いろんなプラスチックを太陽が直接当たるところに置いて、何日かしてどうなったか調べてみるといいですね。
 

    
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