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   いろいろな質問(蛍光 その2)
   
 蛍光とリン光の違いは分かりましたが、蓄光というのはどういった仕組みなのでしょう。最近市販されている蓄光グッズは、昔よりも明るく、長持ちするような気がします。
 光を当ててすぐ光るのが蛍光、遅れて光るのがリン光だというのは、ご理解いただけましたね。それから、光を当てなくても光る、ホタルの生物発光や化学発光もご理解できましたね。光でなくても、電気、放射線、化学物質などの刺激によっても光が出ることもおわかりいただいたと思います。
 蓄光とは科学的な言葉ではなく、現象的にゆっくり光るという意味で使われていると思います。時計の文字盤に使われている蛍光物質は、電気を消してもしばらく光っています。これが、もっと長く光っているのを、蓄光と呼んでいるものとおもいます。
 蛍光物質はテレビのブラウン管に塗ってある物ですが、後ろの電子銃から電子を当てて、蛍光を出しているのです。この場合、すぐに消えないと、テレビにはなりませんね。
 蓄光では、他の物質から徐々にエネルギーを与えて、発光の時間を長くしているのです。時計の文字盤に使われているものは、テレビのブラウン管に塗ってある蛍光物質に放射性物質が混ぜてあるのです。放射性物質は、徐々に核分裂が起こり、エネルギーを出しますので、そのエネルギーで蛍光が出るのです。
 放射性物質は危険なので、現在は使われていませんが、それに代わる物質(放射線は出ないが同じように反応する物質)が使われています。したがって、一種の化学発光です。
 黄リンも、ゆっくり光りますが、これはゆっくり酸化され、その際のエネルギーが発光に使われている、化学発光です。
 現在使われている蓄光グッズは、全て無機材料で、有機材料は有りませんが、ホタルを考えると、有機材料でも可能だと思います。
 
 フルオレセインはそもそも赤色の物質ですが、エタノール溶液でそれらを希釈すると黄色を発色します。なぜなのかわかりません。
 また、そこに水酸化ナトリウム水溶液を加えると緑色の蛍光を発します。どうも共役系のスペクトルとは関係もないようで、全くわかりません。
フルオレセインにはいろいろな 異性体が考えられます(右図)。
 フルオレセインを合成すると赤色の結晶になりますが、これは(1)です。これを還元すると(2)になりますが、色がありません。
 エタノールに溶かすと、(3)のようになり、黄色になると言われています。アルカリに溶かすと(4)のようになり、これは緑色で蛍光をよく発します。まだ、はっきりしないところもあります。特に、溶液と結晶では色が違って、難しいことがあります。
 スペクトルは共役系の長さを示しますので、色と密接に関係します。しかし、蛍光の色とは直接は関係ありません。なぜなら、蛍光は励起状態から基底状態に落ちるときにでるものですからです。
 
 レソルシン(A)と無水フタル酸(B)を反応させた(触媒として硫酸を使用)場合蛍光を示さないフルオロセインができる。アルカリ性にすると蛍光がでますが、どのような構造変化がおこっているのか教えてください
 (A)と(B)を反応させて、フルオロセインを作ったものと思います。
一般には、(A)と(B)を混ぜてカセロール(耐熱の皿)に入れ、180℃ぐらいに加熱して塩化亜鉛(ZnCl2)を加えると、フルオロセインができます。
 硫酸を使っていますので、最初は上の答えの(1)ができ、アルカリ性にして(4)にしたので、蛍光がでたものと思います。
 
  フェノールフタレインの発色反応はpHに依存しますが、実際の感熱紙やノーカーボン紙に使われているロイコ色素と顕色剤であるビスフェノールAやB-ナフトールとの反応の際にも、pHによって発色反応が進むのでしょうか?もしpHによって発色反応が進むのであれば、その最適領域があると思いますが、そのpH領域はどれくらいでしょうか?それともpHに関係なく、他の条件が必要なのでしょうか?
 ロイコ色素の発色は、基本的には酸化・還元の反応です。
 染料を還元するとロイコ色素になり、ロイコ色素を酸化すると色素になります。問題は、着色した色素を安定化することにあります。
 フェノールやシリカゲルは酸化された色素を安定化させる作用があります。もし、発色したものにアルコールを加えると、吸着していた色素が溶けて無色になります。
 酸や塩基も、色素を安定化するのに必要なのです。フェノールフタレインの発色反応がpHに依存することで説明いたしましたが、発色したフェノールフタレインが塩を形成して安定化するのです。もし、溶液中で発色させようとすると、やはりアルカリ性にする必要があります。
これは、酸性にすると無色になります。
 ややこしくなりましたが、基本的には酸化・還元反応ですが、pH(酸や塩基)は色を安定化(元に戻らないように)するのに必要なのです。
 感熱紙は水の無い系ですので、顕色剤があれば安定で戻りませんが、水やアルコールを加えるとアルカリが無いので色が消えてしまいます
 
 有機エレクトロルミネッセンスディスプレーに使用される材料について調べています。代表的な蛍光物質として、Alq3と略称されているヒドロキシキノリンとアルミニウムとの錯体が知られているようです。
この物質の取扱い方法やメーカーなどについて知りたいのですが、上記のような名称からは分かりませんでした。
この物質は何か特別な慣用名があるのでしょうか。その他、何かこの物質についてご存知でしたらお教え頂ければ幸いです。
 8-ヒドロキシキノリンは、ありふれた試薬で、メーカーはわかりませんが、簡単に手に入ります。
 Alq3は、アルミニウムに 8-ヒドロキシキノリンが三つ配位した錯体なので、簡単のためこのように命名したのでしょう。8-ヒドロキシキノリンは無色の結晶で、融点が72-74℃、沸点は267℃(752mmHg)です。水に難溶、有機溶媒に可溶です。ほとんどの金属イオンと錯体(キレート)を作り、錯体も水に難溶、有機溶媒に可溶です。これを利用して、以前より金属の分離や定量に使われていました。
 ELには、真空蒸着法で薄膜として利用します。金属の種類により発光の色が異なります。8-ヒドロキシキノリンには様々な誘導体があり、これによっても色が変わってきます。
 
 過酸化水素を定量するため、ルミノール発光を利用する事を考えましたが、ルミノールのアルカリ水溶液(1M)にフェリシアン化カリウム水溶液のみ(過酸化水素が存在しない)を加えたら発光してしまいました。たぶん、Fe(III)が酸化剤として作用しているのでは?過酸化水素の定量は、この反応ではできないでしょうか?基礎的な質問で恐縮ですが、ご回答宜しくお願いいたします。
 ルミノールのアルカリ水溶液だけでも空気中の酸素で酸化されて発光しますが、量が少なくて目では見えません。フェリシアン化カリウム水溶液を加えると、触媒になりますので、空気中の酸素で酸化されて発光します。酸化水素はもっと早く多く酸化して、発光が見えやすくするために加えるのです。
 過酸化水素を定量を行うためには、酸素のない系にする必要があるでしょう。窒素ガスを吹き込んで、酸素を除いて、ルミノールのアルカリ水溶液(1M)にフェリシアン化カリウム水溶液を加えても発光しない状態にする必要があるでしょう。

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