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   いろいろな質問(染料 その1)
   
 ニグロシン染料のエネルギーギャップはどのくらいの大きさなのでしょうか?
 ニグロシンはアニリンが縮合した物質で、純粋な化合物ではありません。いろいろな長さのものが混合したものです。したがって、スペクトルを解析するのは困難で、エネルギーギャップを求めることができません。
 どなたか測定されている方もおられるかもしれませんが、それはおおよその値にすぎません。
 
 違う色の染料は混ざりあうのですか?(粉末染料イエローと粉末染料ブルーを使いグリーン染料を作ったのですが、鉄に色を付けたところ、乾くと黄色っぽい箇所と青っぽい箇所がありまだらになってしまいました。アルコールで染料を溶いた液体はきれいに混ざっているように見えたのですが。
 染料の混合は非常に難しいです。
 性質のよく似たものは混ざり合いますが、異なるものは混ざりません。水と油が混ざらないようなものです。
 市販の緑の染料は、そのあたりを考えて作っております。市販されている緑の染料をお求めになることをお勧めします。
 アルコールで溶解したときは、アルコールに青も黄色も溶けていて均一なので緑に見えます。しかし、アルコールが蒸発すると、青、黄色それぞれの染料が結晶化、または分離しますので、まだらになります。
 
 繊維製品からの、色落ち・色移りについての質問です。一般に繊維の染色には水に溶ける染料が用いられているようですが、時として、余分な染料が水濡れなどによって溶け出し、色落ち・色移りに至るのですよね。そこで質問ですが、繊維の染色にあたっては、染料分子を繊維表面に固着させるため、どのような処理が一般的にされているのでしょうか。
 染色は古くから行われていたもので、有機溶媒などが無い頃からです。
 現代では有機溶媒を使った染色も可能でしょうが、取り扱いが大変ですので、簡単な水を使う染色が行われています。
 染色では染料が繊維に付くのですが、1)化学結合によるものと、2)単に吸着している(物理吸着)ものがあります。また、化学結合では、強固な共有結合によるものと、水素結合やイオン結合などの緩くてはずれやすい結合があります。
 ウールなどのタンパク質繊維はイオン結合、コットンなどのセルロース繊維は水素結合です。繊維と化学反応する反応性染料は共有結合です。
 繊維、たとえば一本の糸を考えた場合、染料が結合できる場所は限られているので、余分に加えた染料は洗い流されます。また、しっかりと結合していなかった染料は、いろんな処理で溶けて出てきます。
一 般的には、共有結合以外は、処理(加熱、酸、アルカリ、洗剤など)によりはずれると考えて良いでしょう。
 水に溶けない顔料を用いると、色落ちはしません。
 染色では媒染という処理が行われます。金属イオンの溶液で処理するのですが、昔は灰が使われました。染料が金属イオンと錯体を作り、水に溶けない色素に変わります。したがって、色落ちがしないのです。
 染色の具体的な方法は、検索で探してみてください。新しい染色として、インクジェットプリンターを用いた方法が研究されいて、今後の一般的な染色法になると思いますが、素朴な手作りの染色が、人間味があって良いと思うのですが。
 
 キャンドル(ろう)に色をつけたいのですが、キャンドル(ワックス)に溶けて燃えても有害でない染料とはどんなものがありますか?(顔料ではなく染料に限って教えてください。)
  一般に、燃えて有害物質が出るものとして、クロムなどの重金属類とダイオキシンです。天然色素は、大丈夫です。合成色素も重金属が入っているのはないので、大丈夫です。
 塩素が入っている有機物は、燃えるとダイオキシンが出る可能性はあります。塩素が入った色素は少ないのですが、赤色104などには入っています。ただし、ローソク(炭化水素)の割合に対して、色素の割合(重量比)が少ないので、ダイオキシンがでるようなことはないと思いますが、データーは持っていません。
 
 反応性染料と木綿との染着機構(メカニズム)を教えてください。
 反応性色素にもいろいろあります。
 一般的な黄色の反応性色素として、色素に塩化シアヌルという反応性の基が付いたものがあります。塩化シアヌルは反応性が高く、アルコールやアミンとよく反応し、塩化水素(HCl)ができます。
 木綿はセルロースですから、水酸基(-OH)を持っていて、塩化シアヌル基と反応します。また、ナイロンや動物性の繊維は、アミノ基と反応します。
 反応すると塩化水素が出ますので、アルカリ(Na2CO3など)で中和します。こうして、色素と繊維が共有結合で結びつくので、安定な染色ができるのです。
 
 ペットのマーキングでおしっこのアンモニア(これは直ぐに揮散してしまうと思いますが)やアミンを色で検出したくて、フェノールフタレンとかチモールブルーなどを試してみたのですが、指示薬の濃度が3%くらいでは色が変わりません。何かほかにいい方法があったらお教えください。
 アンモニアの検出にはネスラー試薬(Nessler's reagent)が使われます。ヨウ化水銀(II)とヨウ化カリウムのの水溶液で、微量の アンモニアの検出に用いられる(感度は0.05μgNH3/ml)。次の式により、褐色の沈殿( [OHg2NH2]I )ができます。
 NH3 + 2[HgI4]2- +3OH- → [OHg2NH2]I + 7I- + 2H2O
 アンモニアがアンモニウムイオン(NH3+、塩化アンモニウムNH3Clなど)となっている場合は、乾燥しても残っている可能性があります。この場合は、苛性ソーダ水溶液(NaOH)を加えてアンモニアを遊離させ、ネスラー試薬を加えます。
 しかし、ネスラー試薬は試薬を作らなければならないのでやっかいですし、有毒な水銀が含まれています。 また、アンモニアはガスですので、直ぐに飛んで無くなってしまいます。アンモニアなどのアミンを水に溶かすと、水との間で平衡になります。したがって、その溶液がアルカリ性になるためには、一定量以上のアンモニアを加える必要があります。その量は、計算で求めることができます。しかし、おしっこのアンモニアは少ないので無理かと思います。
 pH試験紙でペットの新鮮な尿を検査して、ペットの病気(尿結石)を調べる方法がありますが、健康なら中性、病気なら少しアルカリ性だそうです。マーキングの跡からアンモニアを検出するのは困難だと思います。
 これは推測ですが、尿には少量のタンパク質や血液が含まれていて、乾燥しても残っていると思われますので、ニンヒドリン反応やルミノール反応が使えるかもしれません。
 

 
   
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