39   

キリヤ化学ホームページへ

 
   いろいろな質問(色素その3)
   
 食品色素を使用し、消化器粘膜表面や口腔粘膜表面の隆起箇所や平坦で周囲との境界壁、陥没箇所に色素を散布し正常異常領域を判断できるでしょうか。?
 医療分野には詳しくないことを、最初に申し上げます。
 粘膜表面がどのような電荷を持っているのかは知りませんが、細胞と同じくマイナスの電荷を持っているのでしょうか?合成食用色素には、マイナスの電荷(-SO3-や-COO-)を持っている物が多いのですが、電荷が中和された中性の物(-SO3-とNH3+を持つ)もあります。マイナスの物は無理でしょうが、中性の物は染色することができるでしょう。
 繊維を染色するときには、疎水結合、水素結合を用いますが、そのあたりを調べられてはいかがでしょうか。
 あまり科学的ではありませんが、食用色素の入ったゼリーやキャンディを食べると舌が着色しますので、粘膜も着色することができると考えられます。また、歯医者さんでは歯石を着色して、検査していますね。歯石は歯周菌の死骸ですから、おそらくマイナスの荷電を持っていて、歯の成分(ヒドロキシアパタイト)とは異なるので、歯石を着色することができると思います。
 正常異常領域を判別するのはどうか分かりませんが、陥没箇所には食品のカスが付着しているので、差別して着色することは可能だと思います。
 
 ソラマメご飯を作りました。生のソラマメを生のまま米と塩と酒を入れて炊いたところ、豆の皮は褐変し茶色に、ご飯も茶色から赤いような色でした。前回作ったときは、このような色にはならなかったのですが。どうしてでしょう?ソラマメにもアントシアン系の色素が含まれているのでしょうか?
 残念ながら料理は詳しくないので、正確にお答えできません。
 ソラマメなどの豆類の皮には、アントシアニン系の色素が含まれています。その色素が抜けて、ご飯を着色したのでしょう。
 前回はそんなことが無かったようですが、おそらく豆の状態が違っていたのではないでしょうか。豆は未熟なときと熟したときとは、皮の表面の堅さが違います。今回は恐らく未熟で、皮が薄かったのではないでしょうか。
 生のままで入れるのではなく、あらかじめ豆を料理しておくと皮の表面が堅くなり、色素が流れ出ることがなくなるのではないでしょうか。
 豆を料理しておけば、ご飯が炊きあがった瞬間に加えると、色はきれいなままだと思われます。
 
 ルーエマン紫に染色されたセルロースろ紙を溶解させて比色したいのですが、適当な注出液を教えてください。波長もおねがいします。
 ニンヒドリン反応でできるルーエマン紫(Ruhemann's purple)の吸収波長は、578 nmです。水に溶けると思いますが、溶けないときは少しアルコールを入れてください。
 一般的にアミノ酸のニンヒドリン反応では、中性水溶液(pH 4-8)で行います。しかし、この反応をろ紙上で行うと、水溶液中の反応とは異なり、呈色物の色調が必ずしも一定にはなりません。
 水分の少ない系で行っても、やはり色が一定になりません。それは、副反応が起こるからで、Ruhemann's purple以外に、黄色(354 nm)や青色(650 nm)などの色素が副生します。
 定量したいときは、水溶液で行ってください。
 
 合成着色料を使っている製品は、どのように表示されているのですか?また、どのようにすれば、合成着色料か、天然着色料か分かるのですか?
 食用色素は厚生省(今は厚生労働省)の認可がある物しか使うことができません。また、化粧品には食用色素以外の色素も使えますが、やはり認可された物です。
 使用している色素は、表示がされています。たとえば、「食用黄色 4号」は、「黄色4号」のように表示されています。
 また、天然色素も認可された物しか使えませんが、やはり表示されています。
 化粧品の成分は全て表示されるようになりました。お手元の最近購入された化粧品をご覧になると、成分がたくさん書いてあってびっくりされると思います。
 合成着色料か、天然着色料かを区別するには、添加されている色素名から調べるのがいいでしょう。表示されていないときにどのような色素かを調べるには、化学的な分析が必要ですが、簡単ではありません。
 
 黒ごまの色素は何ですか?
 黒ごまの黒は、ポリフェノールだと言われています。ポリフェノールは、紅茶などの色です。
 黒豆はアントシアニン類で、黒砂糖は白い砂糖のお焦げです(カラメル、カーボン)。
 黒ビールも麦を焦がしたもので、黒砂糖とおなじくカーボンです。
 
 質問は、有機化合物の色素と無機化合物の色素についてです。
 化学では有機化合物と無機化合物は、分けて考えており、性質もとても異なります。そこで、染料とか顔料とかを扱っている方々の間では、有機と無機は区別しておられるのでしょうか。
 そもそも、色がついている無機化合物は、これらの用途に使われているのでしょうか。また、有機系色素の用途と、無機系色素の用途を教えてください。
 化合物には、有機系、無機系ともう一つ有機金属系があります。有機金属とは、たとえば、クロロフィルやヘモグロビンなどのような金属を含んだ有機化合物です。天然物、合成物は、化合物の原料の問題ですので、化学的には区別しておりません。
 染料や顔料は、一定の波長を反射すればいいのですので、色という点ではどちらでも良いことになります。
 溶解性でいえば、有機系が溶けやすく、無機系は溶けにくいので、無機系は顔料が多いです。
 無機系でよく使われるのは、酸化チタンで、白い顔料です。これは、UVをカットする化粧品にも入っています。ただし、酸化チタンは光が当たると有機物を分解(光触媒)するので、皮膚に接する部分はガラスなどでコーティングします。一般に使われる白色顔料は酸化チタンだと考えていいでしょう。
 現在は毒性が少ない有機系の色素が使われますが、昔は無機系の顔料が多く使われました。
たとえば、鉄や鉛の顔料です。鉛の白粉で中毒になり早く死んだ歌舞伎の役者さんの話は聞かれたことがあるでしょう。赤いベンガラは鉄ですが、お寺や神社の建物に塗ってありますね。
食用色素には重金属は禁物で、CaやMgぐらいは許されます。
 

   
Q&A INDEX Q-38へ    Q-40へ